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鏡薔薇【文豪ストレイドッグス】

第5章 追憶と過去





「奏音、僕らも行こう。
遅いと怒られるかも。」

業は奏音の手を引いて歩き出す。

彼女は部屋の扉が閉まるまで、四番の部屋の扉から目を離すことは無かった。




「此処の部屋に集まったのは、六~八歳の奴らだ!年齢に間違いはねぇか?!」

五番部屋を取り仕切る男がそう叫ぶ。

年齢に間違いのある子供は一人もおらず、全員が静かに黙る。



男は辺りを見回し、丁度業の居る所に目を留めた。

「そこの…同褐色髪の男と、その隣の女、一寸こっちに来い。


…お前らから検査してやる。」

そう云われた瞬間、業は奏音の手をするりと握る。


そして、


大丈夫。


と口パクで云い、微笑んだ。



「男はこっち、女はこっち。別々の扉を開けて部屋に入れ。」

二人は云われた通りに扉を開けて部屋の中へ消えていった。



◇◇◇◇


「あら?こんにちは。
貴女……名前は何て云うの?」

奏音が入った部屋の奥には、一人の女が何も無い部屋の中心に座っていた。



『……奏音って云います。』

「そう…こんな偶然あるのね。
良かったわね、貴女。酷い事はされないわ。」

そう云って女は微笑んだ。



「さてと。身体検査、始めようね。」

そう云い乍、女は彼女の身体のあちこちを触っていく。



「丈夫ね、身体。きっと貴女に決まるわ。」

身体検査が終わり、奏音が部屋を出る時に云われた言葉の意味が、その時の彼女には未だ解らなかった───。




入ってきた扉とは全く違う、緑の扉を開けると、次の部屋に繋がっていた。

他にも扉は三つあったのだが、奏音はこの扉を指示されたのだ。



部屋の中には大きな寝台が一つ。そして、病院の手術室に置いてある様な器具や機械が沢山置いてあった。

部屋の入口で呆然としていると、男か女か見た目では解らない人に声を掛けられる。



「此処に寝転がって。少し眠ろうか。」

その人はそう云って寝台を指さす。


云われるがまま、寝台に寝転がると、急激な眠気に襲われる。


「眠くなって来たかな?そのまま睡眠欲に抗わずに寝てしまいな。






……その方が痛みは無いだろうから、さ。」

その人の最後の言葉を頭で反芻する前に、奏音の意識は途絶えた。



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