第4章 微睡みから醒めて
「これ全部家なんだとよ。」
中也はガイドブックを見乍そう云う。
『へぇ!こんな素敵なお家に住めたら良いねぇ〜』
「でも私たちには眩し過ぎるよ。」
太宰の顔に翳りが見える。
「確かにな。俺らの格好じゃ浮いちまうな。」
そう云って各々が自らの格好を確認する。
太宰は白のシャツに黒いパンツ。その上に黒い外套を羽織っている。
中也はグレーのパーカーに黒いパンツ。黒のジャケットを羽織っていた。
そして、奏音は淡い水色のシャツに黒のスキニー。黒い丈長の外套を羽織っていた。
全員黒を基調としたコーディネートなのだ。
『…確かに私たち全員真っ黒だもんね…』
三人で顔を見合わせて笑う。
その笑顔は、真っ白な家に負けないくらい眩しく、輝いていた。
◇◇◇◇
『〜〜〜っ!美味しい!』
頬を押さえながら奏音は満面の笑みを浮かべる。
「そりゃ良かった。此処の団子は美味しいって評判だったんだ。」
中也はそう云い乍、自らも団子を一口食す。
「ねぇ奏音、私もそれ、一つ欲しいのだけど。」
『へっ?あ、良いよ?』
太宰は奏音が持っていた団子を一つ口に咥える。
「ん、奏音の桜味の団子も美味しいね。ありがとう。」
『それは良かった!治のも頂戴?』
奏音がそう云うと太宰は少し口角を上げて、
「はい、あ〜ん。」
と、彼女の前に団子を差し出す。
『え…これじゃないとくれないの、?』
奏音は頬を赤らめ乍そう問う。
「うん。ほら、早く。」
太宰はニコニコし乍奏音の前に団子をチラつかせる。
『うぅ…』
躊躇い乍も奏音も一口。
『ん!美味しい!
…治のこれって、餡子だよね?』
「そうだよ。美味しいよね。」
そう云って二人は笑う。