第4章 微睡みから醒めて
「なァ奏音、俺にも一口くれよ。」
二人の一連のやり取りを黙って見ていた中也が口を開く。
『はい、どう…』
奏音が云い終える前に中也は奏音の手を掴んで団子を自分の口に持っていく。
「ん、上手いな!」
そう云って中也は笑顔になる。
『〜〜〜っ…』
奏音は声にならない叫びを上げて、顔を羞恥で赤らめた。
その後、二人に見られていることに気付き、照れ隠しではにかむ。
……その笑顔、反則。
二人は心の中で同時に呟いた。
夜になり、夜景が綺麗に見える高台まで登ってゆく。
「はぁ…綺麗だねぇ。」
太宰が感慨深い声を出す。
『うん…ほんとだね。
私、今日二人と此処に来られて良かった。』
「あァ、俺もだ。」
その後三人は暫くの間、煌めく星空の下で無言のまま、夜の爽やかな風にあたっていた。
◆◆◆◆
『…疲れた……』
夜遅くに執務室に帰ってきた奏音は独りそう呟く。
すると、不意に扉がノックされる。
「奏音、入っても良いか?」
『ち、中也、?良いけど…』
中也は真剣な面持ちで部屋に入ってくる。
「ありがとな。奏音に少し確認したいものが出来たんだ。」
そう云い乍中也は電子端末を弄り始める。
「…なァ、この年に見覚えねェか?」
奏音も電子端末を覗き込む、が、直ぐに顔を背けてしまう。
『覚えてるに決まってる。
忘れる訳が無い。
否、忘れられる訳が無い。』
「矢ッ張りか。
この話、詳しく聞かせてくれねぇか?
俺がポートマフィアに入る前の話なんだよ。」
『……嫌だって云ったら、中也はどうする?』
そう問うた奏音の声は震えていた。
「強要はしねぇ。だが、手伝いたいって思ってるぜ。」
『………』
奏音は唇を噛み締め乍押し黙ってしまった。
『…話す。全部私の知ってることを話すよ。
だから中也。覚悟して欲しいの。』
彼女の目は真剣になり、声もワントーン落ちる。
中也は彼女の放つ気迫に押され乍も姿勢を正す。
奏音は深呼吸をして、話し始めた───。