第4章 微睡みから醒めて
『解らない。
この後のことは本当に何も解らないの。
だから、私は記憶探しの旅をしているの。
実際に業や有島さんにも話を聞こうと思ってる。』
「それが俺が関わりそうな所だな?」
『うん。業や有島さんに会うことをお父様…あ、首領は良く思っていないからね。』
「………ン?お父様、?首領が、?」
中也は困惑顔で首を捻る。
『あ、あれ?云って無かったっけ…
そう。ポートマフィアの首領は私のお父様。
研究施設で過ごしていた時の記憶は無いけど、ポートマフィアに連れてこられた時の記憶はあるの。
森医師がいきなり私の所へ来て、自分が私の本当のお父さんだって。
で、そのままポートマフィアにおいでって。
最初は信じられなかったんだけど、証拠を見せてもらって信じることが出来たの。』
そう云って奏音は微笑んだ。
「そうだったのか。
だからあんなに親しそうだったんだな。」
中也は納得した表情を浮かべる。
『え、?何処でそう感じたの?』
「初めて手前と首領が顔を合わせた時だが?」
『あぁ、あれはね、私が昔ポートマフィアに居たからなの。』
「は?手前のこと見なかったぞ?」
頭に疑問符を浮かべた様な顔をする中也。
先刻から奏音の話に振り回されて、表情がころころと変わってゆく。
『そりゃそうだよ。他の構成員の目には入らない様に隔離されてたもん。
私を知ってたのは、お父様、紅葉の姐様、治、エリスちゃんの四人だけだったよ。
確か…中也はその頃もうポートマフィアに居たと思うよ。 あ、途中から入ってきたのかな、?』
奏音は曖昧な記憶を手繰り寄せ、繋ぎ合わせてゆく。
「はぁ…俺も手前について知らないことばかりだな。
よし。これからも思い出したら俺に話してくれよ。そしたら少しは力になれるかもしれねェし。」
中也は溜め息をつき乍も、奏音のことを真剣に考えていた。
『…気が向いたら話すね。』
「あァ、それで良い。」
二人の顔に微かに笑顔が戻って来た頃、地平線には煌めきを放つ太陽が顔を出し始める。
『…綺麗、だね。
何だか……私たちの心の中にある汚い物を浄化してくれているみたい。』
「だな。俺らには眩し過ぎる位の輝きだな。」
そう云って中也は奏音を抱き締める。