第4章 微睡みから醒めて
────翌日の早朝、4:30。
『………っ…ぅっ…』
奏音は静かに枕を濡らしていた。
「奏音、?手前、泣いてる、のか?」
小さなすすり泣きに気付いた中也が奏音の傍に腰を下ろす。
『……ちゅう、や……見ないで?』
泪で声を湿らせてそう云う奏音。
「そらァ無理な話だ。
…少しベランダに出よう。そこで話、聞かせて貰うからな?」
そう云って中也は彼女を抱き上げて寝室から出て行った。
「昨日の夢の事だろ?
俺に云えそうなら云ってみろ。」
中也は酷く優しい声で奏音の髪を撫で乍云う。
『……これを聞いたら、中也のことだからきっと、私の問題に関わろうとすると思うの。
でも…駄目だよ。危ないから。私自身の問題だから。
関わらないって約束するなら…話す。』
奏音の目は本気だった。
唇を固く噛み締め、泪で目を潤ませていた。
「…解った。取り敢えずは関わらない。
だが、手前が余りにも危険な目にあったら関わる。良いな?」
『……うーん…解った、良いよ。』
そうして奏音は夢の話をし始めた。
『私が昨日海岸で見た夢は私の幼少期の頃の実話なの。
目が覚めたら、とある研究施設に連れてこられて、そこから六時間くらい検査を受けた。
その後部屋を移されて半監禁状態で過ごしたの。
でも翌朝目が覚めてみると、昨日までは私を睨んでた黒さんは私に敬語を使うし、その組織のボスは私を"由良"って呼んだの。
その後黒さんに教えて貰って解った事なんだけど、由良ってそのボスの愛娘の名前だったらしいの。私の容姿がそっくりだったから、そう勘違いをし続けてたんだって。
その後は……
業って子と、有島さんって人に出会って…
………実はこの後の記憶が曖昧で、思い出そうとすると激しい頭痛に襲われるの。
誰かが記憶に鍵を掛けてるみたいに。』
奏音の話を中也は終始無言で聞いていた。
所々相槌を打っていたが、話に聞き入る余り、それすらも忘れていることが多かった。
「そうだったんだな…
手前も大変な幼少期を送ってきたんだな。
…そのボスの名前は解るのか?」