第4章 微睡みから醒めて
「…此処がお前の部屋だ。
ウチのボスがお前の事を何故気に入ったかは知らねぇが…取り敢えずずっと此処にいろ。此処から出たい時は俺らに声を掛けろ。良いな?」
『………は、はいっ……』
厳つい顔をした男から凄まれて怯えていたのは当時6歳の奏音だ。
壁一面真っ白な部屋に、真っ黒な寝台が一つ。
そして真っ白な机椅子が一つ。そして無機質な音を奏でる時計が一つ。他には何も無い部屋だった。
脱走防止の為に窓には鉄格子が張られ、自殺防止の為に、寝台や机椅子の角は丸く処理してあった。
『…何だか不気味。』
嫌そうな顔をし乍も眠気には逆らえず奏音は寝台に横になる。
なんせ六時間寝ずに検査を受けていたのだから仕方の無い事だった。
硬い寝台とは裏腹に柔らかい羽毛布団に身を包むと、直ぐに意識を手放した。
───奏音が眠りに落ちて、四、五時間後。
「起きなさい。起きなさい、由良。」
「由良様。起床時間です。ボスも直々に来て下さっているので起きて下さい。」
先日の奏音を凄んでいた男と、この組織の長が奏音の身体を揺さぶる。
『……んっ…あ、
おはようございます。』
奏音は目の前の状況が理解出来ずに戸惑い乍挨拶をする。
「由良、朝食は一緒に摂ろう。
此方においで。」
ボスは奏音に手を伸ばす。
『ゆ、由良、? え、?』
戸惑いを隠せぬまま奏音はボスの手を取る。
手を引かれ、食堂に入ると、使用人や召使いが一斉に頭を下げる。
釣られて奏音も頭を下げると、上から笑い声が聞こえた。
「はっはっは!由良まで頭を下げなくても良い。
お前を此奴らは歓迎しているのだからな。」
そう云ってボスは一番奥の席に腰を下ろす。
「ほら、此方に座りなさい。
此処が由良の席だよ。」
そう云って彼が指さしたのは彼の向かいの席だった。
云われるがまま席に着き、朝食を食べる奏音。
緊張の余り、食べ物の味は全くせず、また喉を通らない。