第1章 出会いと始まり
─────その後中也の執務室にて。
「手前、奏音って名前だったのか。」
中也が帽子を丁寧に棚の上に置き乍云う。
『そうですよ。中原さんは確か初めてでしたね。』
「あァ。
……っておィ。手前どこ寝っ転がってンだよ。」
空かさず太宰に突っかかる中也。
『相性が良いのだか悪いのだか。』
ボソリと奏音が呟く。
「どっからどう見ても悪いだろ!
手前ェッ…どっか行きやがれ!」
中也は必死に太宰を寝台から降ろそうと引っ張る。
「嫌だね。奏音ちゃんがどちらの部屋で寝るか決まって無いもん。 」
『は…?私は一人で寝ますけど?』
奏音は呆気に取られ乍も否定する。
「否々!そう云う訳にもいかないのだよ。」
太宰は何故か偉そうに人差し指を立てて云う。
『……"簡潔に"説明願います。』
奏音は興味が無いのだろう。口調も冷淡になっていた。
「───最近、異能力者が悪夢を見ると云う事件が多発しているんだ。
きっと、誰かの異能なんだろうけど。
悪夢…君は怖がるだろう?だから私と寝るべきなのだよ。」
太宰は満足そうに、したり顔をしている。
「…どちらの部屋で寝るか、じゃねェのかよ。奏音が太宰のが慣れてるンなら、太宰のが良いンじゃねェか?」
中也はそう云い乍寝台の整頓を着々と進めてゆく。
『私は正直どちらでも良いですよ。
唯…もし太宰さんに成るなら、頼むから寝かせて頂戴。貴方、何時もみたく意地悪する気満々でしょう?』
呆れて溜息を零す奏音。
それを愉し気に見詰める太宰。
「ンじャあ…安心なのは俺か?」
太宰を出し抜けると思ったのか、中也も少し乗ってきた様だ。口の端をニヤリとさせる。
『確かに、ね。じゃあ中原さんのとこにお邪魔しようかなぁ?ご覧の通りそんなに幅は取らないから、寝台じゃ無くていいですし。
…それこそ、そのソファで十分ですし。』
「……へぇ……?
奏音ちゃん…君……
私にそんな風に逆らっても良いのかい…?」
背筋がゾクリと震えるような低音で太宰は奏音を脅しにかかる。そこまでしてでも彼女と寝たいらしい。
『…わ、解ったわよ。今日だけだからね。』
奏音は動揺し乍太宰に同意した。