第11章 真実と虚偽の狭間で
「首領は予想されていたんですか?
業が死んでいることを。」
中也は不思議そうな顔をしつつ尋ねる。
「ある程度は。
…否、殺そうと思っていたから死んでいて当たり前だと思っていたよ。
だから、有島くんが生きていると聞いた時は私の方こそ心臓が止まるかと思ったのだよ。」
鴎外の予想外の告白に中也は少したじろぐ。
「何故、首領は業と有島を殺そうとしたんですか?」
「そうだね…当時、私は大きな嘘を抱えていた。
……奏音にね。」
「奏音に、ですか?」
「あぁ。でも……この嘘の内容は軽率に話すべきでは無いね。また今度機会を作ろう。
その嘘を守るためには有島くんと業くんを処分する必要があった。
彼らがその嘘を疑いだしたからだ。
私より彼らの方が奏音との付き合いは長い。
だから、奏音の気持ちの揺らぎも彼らの方に向いていた。」
鴎外は飄々と話しているようだが、目の奥には悲痛とも取れる感情が篭っていた。
「そう…だったんですね。俺はその時ポートマフィアには居ませんでしたから、良く解らないですが。」
中也も踏み込むべき領域でないことを理解し、すっと身を引く。
「…俺はこれで失礼します。」
「……懸命な判断だ。」
鴎外の呟きが中也に届くことはなかった。
◇◇◇◇
──── その日の夜。
奏音は眠れずに宙を仰いでいた。
『真逆、そんな……』
未だ頭の整理が着いておらず、先刻からずっと同じような事を呟いていた。
『ケイ………さんっ………。』
たまに彼の名前を呟き、涙を流す。