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鏡薔薇【文豪ストレイドッグス】

第11章 真実と虚偽の狭間で





その声に呼応するように、業と有島を光が包んだ。



「死ぬの早い。おいらを置いていくなんて信じられないんだから。」


大粒の泪を流し乍ケイは2人の元へ歩み寄る。




「……んっ……ケイ、くん?」

最初に目を醒ましたのは有島だ。


「矢ッ張りケイくんか。異能がケイくんだもん。」

そう云って酷く安堵した表情を浮かべた。


「矢ッ張りじゃないよ。連絡が遅すぎる。
死ぬ前なら森鴎外を殺せたのに。」


悔しそうに呟くケイ。
それを見て有島はくすりと笑みを零した。



「業は起きないね。もう連れて行こうか。」

ケイは業を抱き抱えて、有島と共に燃え盛るポートマフィアビルから脱出したのだった。






「此処でいい?」

そう云ってケイが2人を連れて来たのは廃れたビルだった。


「隠れ家にしちゃ上出来でしょ。」

有島も快諾し、業を休ませることが出来る場所まで業を運んだ。



「そう云えば。ケイくんの異能発動時ってさ、あれなんて云ってるの?

大体気を失ってるか、朦朧としてるかで聞こえないんだよ。」


「…生死卍巴(せいしまんじどもえ)。
名前が厳ついから嫌いなんだよねぇ」


ケイは少し自分を嘲る様な口調で告げた。



その後暫くの間、2人の間には沈黙が続いた。





「…奏音はまだ向こうなんだよね?」

その沈黙を破ったのはケイだ。


「うん。流石に無理だった。
太宰治。悪魔の申し子に連れて行かれた。」


「奏音もあながち悪魔の申し子で間違い無いけどね。」

そう云ってケイは笑った。


「確かにね…殺傷能力に優れた水鏡に、暗殺に優れた大鏡、多数の敵を向かい撃てる増鏡に……




制御不能な今鏡。」


「一つの異能に四つも効果って云うのかな、があるのは初耳だったなぁ……」


ケイはそう云って唇を噛み締めた。
何処か懐かしむ様な顔をしていた──。



◆◆◆◆


「これで解ったかな?」

有島の一言で奏音がはっと我に帰る。



『うん。吃驚した。
2人と離れ離れになっちゃったのは、




────森鴎外。
あの人の所為、だったんだね。』


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