第11章 真実と虚偽の狭間で
「取り敢えずはこんな感じ?」
そう云って業は肩を竦ませた。
『ありがとう。そう云うことか。
偶に異能が全く制御出来なくなるの。
…その所為で柚音も殺しちゃったし…。』
悔しそうに唇を噛み締めた奏音。
そんな奏音を有島は申し訳なさそうな顔で見詰めていた。
『その数年後のさ、2人がポートマフィアから消えたところの話、聞いてもいい?』
早く全ての真相が知りたい奏音は彼らを急かす。
「良いけど…ほんとにショック受けると思うよ?
今迄の信頼関係崩れる人もいるよ?いいの?」
有島の忠告に少し戦き乍も、知りたいと云う気持ちの方が強かった奏音は力強く頷いた。
「解った。話すよ。」
◆◆◆◆
奏音が太宰の胸の中で眠ってしまったその数分後───。
「太宰!有島!業!そこを離れるんじゃ!」
突然紅葉が着物の裾をたくし上げ乍、太宰らの方へ走ってくる。
「ビルの一部が爆破によって崩壊し始めたんじゃ。急いで逃げるんじゃ!」
全員が状況の重さを把握し、黙って頷き走り出す。
太宰が奏音を抱え、紅葉の後を追う。
そして、業が柚音を抱え、有島と別方向へと走って行く。
有島と業が暫く走り続けると、目の前を瓦礫が塞ぐ。
どうするか迷っていると、背後から靴音が聞こえてきた。
「有島くん、業くん。待ち給え。」
「……首領。如何されたんですか?こんな所で。」
業は鴎外を睨み付ける。
「そんな怖い顔をしないでくれ給えよ。」
「それは無理ですよ。だって…
貴方は今にも僕らを殺しそうではないですか。」
そう。鴎外は二人に向けて銃を構えていたのだ。
「悪いね。君らを殺すのが、私がポートマフィアの首領として奏音を手元に置いておく為の最適解なのだよ。」
そう云って鴎外は銃弾を彼らの胸元目掛けて放った。
乾いた銃声と共に、二人は崩れ落ちていく。
二人の息の根が止まったのを確認した後、トドメの数発を打ち込み、鴎外はその場から去った。
◇◇◇◇
「……異能力──生死卍巴」
何処からか、静かに呟く声が聞こえる。