第11章 真実と虚偽の狭間で
「はいは〜い。そう云うと思って持ってるー。」
そう云ってケイは一錠の薬を奏音に差し出した。
「これ、飲んで。水はこれ。」
云われるがまま、奏音は薬を飲む。
すると、奏音の目の焦点が合わなくなってきた。
「はっや。流石おいらの薬じゃん。」
自画自賛を一発かましたケイは満足そうに研究室へ消えた。
ドサッと派手な音を立てて奏音が倒れた。
「有島さん。奏音、死にませんよね。」
少し苛立っている様にも見受けられる業が有島に詰め寄る。
「死なないさ!殺したら僕らがボスに殺される。」
「あれは異能を使いこなすサポートをする薬。
副作用は月一の異能力暴走。」
淡々と効力を説明したのは研究室から戻ってきたケイだ。
「使いこなすサポート…そんなの薬で出来るんですね……」
業は感心したような風に頷いていた。
「起きてね〜、始めたいんだけど?」
ケイはそう云い乍奏音の頬をペチペチと叩く。
『……んっ……?
え、あ、ごめんなさい、私…』
動揺している奏音が即座に謝る。
「良いよ。このまま練習相手はおいらね。
かかっておいで。どんな攻撃でも受けてあげるよ。」
『異能力──四鏡、水鏡!』
今迄殆ど成功した事のなかった水鏡で奏音が攻撃を繰り出すと、見事ケイ目掛けて硝子鏡が飛んでいく。
「凄いじゃん。良いじゃん。」
そう云って無傷なケイが奏音の頭を撫でる。
『ケイさん…なんで無傷な何です、?』
「有島くんの異能〜!」
ケイは得意気に笑って有島の方をちらりと見た。
すると、有島も小さくため息を付き、笑った。
「今日はここ迄でいいよ。また明日ね。」
そこから2ヶ月半程、奏音はみっちり異能を使いこなす練習を差せられたのだった。
そして、3ヶ月が経過し、奏音は異能の練習の記憶を全て忘れ、彼らのボスと共に過ごす単純で詰まらない生活が始まったのだった───。