第11章 真実と虚偽の狭間で
「奏音は何処から知りたい?」
『…最初から。全て教えて。
私が知ったら傷付く、とか要らないから。』
強い意志が篭った声でそう告げた奏音の手は微かに震えていた。
「解った。全部話すね。」
そう云って業はぽつりぽつりと語りだした。
◆◆◆◆
────遡るは10年程前。
奏音が黒服によって部屋に連れて行かれ、残された有島、業、ケイは話し始めた。
「業。ケイくん。明日奏音にちゃんと説明しよう。」
有島が目を伏せ乍そう告げる。
「それはおいらも賛成。
…ねぇ有島くん。残酷な質問を1つ。」
少し間があってケイは小さく手を挙げた。
「いいよ。」
「あの子の異能の練習。明日から3ヶ月以内だって。
ほんとに3ヶ月後には明日からその日迄の記憶を消さなきゃいけないの?」
「残念だけど。それはボスからの命令だから。
きっと……お嬢様に仕上げたいんだね。
異能の練習の様子を覚えててもらっちゃ困る。なんなら普段は使えなくていい。って考えの人じゃん。」
「ど、どう云う事ですか…?」
今一話に着いていけてない業が恐る恐る質問する。
「奏音ちゃんは、お嬢様の変わりだから、異能は使えなきゃいけないけど、使い方は知らなくていい。お嬢様自身がそうだったんだ。
…まぁそれも記憶操作でそうなってるんだけどさ、。」
「僕の事も…忘れますか?」
「否、今日君のことを覚えてたから大丈夫。
明日から3ヶ月後までの記憶を消すから。」
少し安堵した表情をした業。
気掛かりだったのは矢張り自身を忘れてしまうかどうか、だったらしい。
「…そろそろ僕らも行動しよう。いいよね、ケイくん。」
有島は目に微かな光を宿してケイを見詰めた。
「勿論だよ。おいらも一仕事しますか〜!」
そう云ってケイは自らの研究室へ帰って行った。
◇◇◇◇
「違う!それじゃ自分の身は守れない!!!」
地下訓練室には有島の怒号が響く。
『は、はいっ…!』
『異能力──四鏡、増鏡!』
何体か奏音の分身が出来るが、反射が多く、なんとか原型を留めるのがやっとであった。
「…ケイくん。もうアレに頼ろう。間に合わない。」
その言葉に業は少し肩を震わせる。