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鏡薔薇【文豪ストレイドッグス】

第10章 目指すのは






「余計な事を奏音に吹き込まないでよね。折角僕らが迎えに来たのにさ…」

今まで口を閉ざしていた業が不意に口を開く。


「て云うか。僕らの方が奏音と一緒にいる時間は長いの。

途中から親しくなった君にそんな事云う権利あるの?」

毒を吐くような口調で業は淡々と言葉を紡いでいく。


まるで言葉で中也を攻撃しているかのようだ。




「…一緒にいる時間より、どれだけ信頼関係が築けたか、じゃねェのかよ。」


対抗するように中也は吐き捨てる。



すると突然奏音が口を開いた。


『私…私は、業と有島さんの過去を知りたい。
そして、私の過去も知りたい。

怖いし、不安は沢山ある。でも、それ以上に何か得られるものがある気がするの。』



「その調子だね、奏音。
さぁ、僕たちと行こうか。」


そう云って有島が手を伸ばした時だった。








「辞め給えよ。見苦しい。」

太宰が片手に銃を構えて彼らの方に向かって歩いてくる。



後ろには鴎外と紅葉がいた。



「奏音。そなたは此方へおいで。」

紅葉が優しく、だが威圧感のある声で奏音を呼ぶ。



『……はい。』

長年の師匠である紅葉には逆らえない彼女は半ば諦めた様な顔をしていた。



その後は少しの静寂が彼らを包んだ。




「…やぁ森さん。久しぶりだね。」

挑発するような口調で先に口を開いたのは業だ。



「久しぶりだね。業くん、有島くん。



…何故此処へ来たんだい?
此処に来れば君たちに明日はないのに。」


メスを両手に構えた鴎外の表情は、何時も以上に恐怖心を煽るものであった。



「僕らも死にに来た訳じゃないさ。



ねぇ奏音。行こうよ。君の異能なら此処まで来るのは造作もないでしょ?」

有島は優しい声で奏音を誘う。



『なんで、みんな邪魔をするかな、?
私は自分の過去が知りたいんだよ、。

自分の過去を知る権利すら私にはないの?!』


そう奏音が叫ぶと、水滴程の大きさの硝子鏡が宙に浮く。




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