第10章 目指すのは
業は即座に奏音に駆け寄り、ぎゅっと抱き締め、彼女の耳元で囁く。
「奏音!暴走しちゃ駄目だよ、!
抑えて、抑えて…。そう、良い子だね。
大丈夫、大丈夫。奏音にはちゃんと
自分の過去を知る権利があるからね。
その為に、僕らとおいで、。ね?」
奏音は無言でこくりと頷く。
すると、有島が業と奏音に駆け寄り…
「異能力───幻想」
と云って2人に触れた。
すると、2人の姿は中也や鴎外からは見えなくなってしまった。
「おい!奏音?
何処に居るんだ?!
だ、太宰、手前には見えんだろ、?」
奏音を連れ去られた恐怖で声が少し震える中也。
「否、私にも見えないよ。
有島くんに触れば見えるようになるけど、触ることが出来ないからね。
…厄介な異能力だよ。」
太宰は肩を竦めてそう云い、その場を去って行った。
◆◆◆◆
───とある倉庫街にて。
「ごめんね〜、アジトが小さくて。」
有島が灯りを付けると、橙の光がポツリと主張する。
『否々、ポートマフィアが大き過ぎるだけだよ。』
奏音の倉庫街に来るまでは硬かった表情も少し綻ぶ。
「ん、少しは緊張解けた?
結構緊張してたよね。表情硬かった。」
業は優しく奏音の頬を撫でた。
『緊張…してたね。
久し振りに2人に会えたから、かな。』
「さてと。そろそろ話そうか。
僕らも早く話して楽になりたい。ねぇ?業。」
有島は2人を席に着くよう促す。
「暖かい飲み物、何がいい?」
「…僕はホットココアで。」
「業…昔から変わらないよね。
奏音は?」
『紅茶。砂糖もミルクもありで。』
「ふふっ。解ったよ~。
じゃあ業、先に少し話していてよ。」
そう云って有島は給湯室の奥へ消えていった。
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