第1章 出会いと始まり
「一つ聞きたい。
────君は…何者だ。」
綾辻は複雑な表情をしていた。
『私は………
元ポートマフィアの唯の子供です。』
少女はそうニコリと笑い乍告げて家の中に姿を消した。
◇◇◇◇
『柚音、ただいま。』
少女は"幼女"に声を掛けた。
─────小さな遺影の幼女に。
遺影に写っているのは彼女の妹だろう。
屈託の無い笑顔で笑う女の子がそこにはいた。
『……今日ね、森さんと太宰さんに久しぶりに会ったよ。二人共元気そうだった。また…あの場所に戻るのかな。私、また……』
すっかり肩を落とし、俯く少女。
そんな少女の背後には気配を殺して立つ一人の男の姿が。
「そうか…柚音ちゃんは君の………」
気配を殺すのを辞めた男が少女の方へ一歩、歩みを進める。
『………太宰様、否、太宰さん。
不法侵入ですよ。』
そう云う少女の声は震えていた。
「無理をするな。君は、もう、充分頑張った。強がらなくて、良いんだよ。」
太宰の言葉が静かな部屋に優しく充満する。
""うっ……うわぁぁぁぁ。""
歳相応の少女の泣き声が部屋中に響き渡る。そんな少女の頭を太宰は優しく抱えていた。
『太宰さん。私……また、同じ惨事を繰り返すかもしれない。それでも、それでもポートマフィアは私を受け入れてくれますか?』
弱った少女の口から飛び出た言葉は、予想だにしないものだった。
頑なに拒んでいたのが嘘だったかの様に。
「うん。少なくとも私は必ず君の味方でいよう。森さんは…考えなくても解るよね。君の味方だ。安心し給え。柚音ちゃんの仇も取らせてあげよう。」
太宰はその場で彼女の意を汲み取り乍話していく。まるで繊細な硝子細工でも扱う様に。
『ポ、ポートマフィアにはさ、今朝の中原さんも居るんだよね?』
少女は上目遣いで太宰を見上げて聞く。
「居るよ。どうかしたのかい?」
少し顔を赤らめた太宰は首を傾げる。
『……先刻、酷い云い方しちゃった。』
すうっと顔から血の気の引く少女。
こうしていると幼く見える。