第1章 第一章 ①
それからというもの暇さえあれば野球の試合を観ていた。
知識を付け分からない部分は自分なりに調べたりその頃出来た野球に詳しい友人に聞いたりしていた。
私の中で野球というスポーツを知ることが趣味になっていたのかもしれない。
そんな時にまたも礼が私に誘いを申し出てきた。
『青道に来ないか』と____
高島礼と親戚関係にあるうちは実質この青道高校理事長と親戚になる。
なので外部受験の話がしやすかったのとあまり郊外は出来ないがその辺の件もあり、特待生なら誰しもだが成績上位キープをすれば学費免除、下宿代も出るし元々東東京にある実家から学校が近いアパートを借りる事が出来ることになったのだ。
こっちに来て早々練習参加になるとは思いもしなかったが少しでも早く慣れて欲しいのだろう。礼は案外世話焼きの様だ。
部員が真剣な眼差しでサングラスをかけた男性、片岡鉄心監督の発する言葉に耳を傾けている間、私は部員たちの顔を、あの日自分が魅了された選手を探していた。
素人でも分かるプレイヤーとしてとてもいい動きをしていた。そして彼の試合の運び方、ゲームメークも素晴らしかった。
フェンス越しではあったがあの夏の試合で気付けば彼のプレーに魅了されてしまっていた。
そしてそんな彼が所属しているチームの支えになれればと今は思っている。
『あ、いた』
声には出さないものの探していた彼を見つけることが出来、気恥しさもありながら少しの間眺めていた。
遠目からでも分かるスポーツサングラス越しの整った顔。凛とした眉に力ある瞳。鼻も高くあぁ言う人をイケメンと呼ぶのだろう。
フェンス越しでは知れなかった部分をじっくりと見てしまう。皆は真剣に監督の話を聞いていると言うのに先程の緊張感は何処へやらか行ってしまったようだ。
長いこと凝視していたためか不意にスポーツサングラス越しの瞳がこちらに向いて視線がぶつかってしまった。
『!!』
思いもよらない事態に視線を監督に向け直し何事も無かったかのように振る舞う。普段あまり使わない表情筋をいつも以上に使わない様意識し、内心はパニック状態で鼓動も早打ちしているがあちらから見るとスンっとした無愛想な顔に見えるだろう。少し火照る頬が気になるが今はこれでやり過ごす他ない。そう思い入りもしない監督の話に耳を傾けていた。