第2章 第二章 ②
春乃に対し世の中こんなに鈍臭い人がいるのだなと正直思った。
先輩たちは仕事が増えると春乃を叱ることが多いが私には稀に見るある意味才能を秘めた人材なのではと思い、失敗して落ち込み『やっぱり向いてないのかな』と弱音を吐く春乃に『希少価値だ』と励ましを入れた。
彼女はぽかんとした表情でこちらを見上げてきたがすぐに『つばきなりの励ましだよね ありがとう』と自分なりの解釈で受け止めていた。
午後練が終わり、マネージャー室で身支度を整えている時の事だった。
ほかのマネージャーたちもそれぞれジャージから制服に着替えている最中、何の前触れもなく幸子先輩が呟いた。
『今年は一年生かっこいい子多いからまたファン増えるかもなぁ』
『あー確かに増えそう』
『今年は豊作だしね』
幸子先輩に共感するように唯先輩と貴子先輩も続いた。
そんな先輩達の言葉に驚いていた春乃が『え?ファンですか?』と切り出した。
『そうだよ うちの野球部有名だから各学年にいるみたい』
『ファンクラブとまでは行かないけど、よくフェンス越しにいるじゃん?あれあれ!』
放課後の練習中よく見かける風景を思い出し『あー いますね確かに』と納得した様に春乃は頷いた。