第2章 第二章 ②
『飯行かねーの?』
呼び止められ振り返ればそこには三年の増子透と二年の御幸一也と倉持洋一がそこにはいた。よく顔も見ずに挨拶をしてしまったため今いる人物を確認し驚いた。
そして今、つばきに話しかけているのは憧れてやまない御幸一也だった。
少しの間驚いて声が出せなかったつばきだがすぐに冷静さを取り戻し『まだやることがあるので』と返し会釈して去ろうとした。
が、
『なら手伝うよ』
『あ?』
『?!』
驚いたのはつばきだけじゃないだろう。
現に倉持は驚きの声を上げ、増子は驚嘆の表情を浮かべている。だがそれと同時に倉持は『こいつ何企んでやがる』と疑念の表情に切り替わり二人の様子を伺った。
『・・・いえ、ただボールケース運ぶだけなので』
『一つだけ?』
『いや、二つですが』
持てない重さじゃない、と言おうとしたつばきの言葉を遮るように『なら一個持つから』と一緒に行くようジェスチャーする御幸。
そんな御幸に困惑しながら様子を見ていた二人に目を向けると倉持たちはくるりと回れ右をし『先行くぞ』と片手を上げた。
突然の出来事に内心混乱状態のつばきはもう一度御幸の方に見返りいつもより焦った様な声色を発した。
『あの、本当に大丈夫なので』
『いーからいーからっ!こういう親切は受け取っとくべきだぜ』
自分より前を歩く御幸にどう接していいか分からずとりあえず黙って後ろを歩いた。
御幸は少し後ろを歩くつばきを気にしながら陽気に話しかけ始めた。
『つばきちゃんだっけ?』
『・・・何故、』
『礼ちゃんから聞いたよ 親戚なんだってな』
『そうですか 。姉さんは意外とお喋りですね』
『はっはっはっ 辛辣だな あ。俺二年の御幸な 』
愉快そうに笑った後名前を名乗ってないことを思い出したのだろう。御幸はハニカミながら名乗ったがそれに対しつばき は可愛げも無く『存じてますよ』と返した。