第1章 第一章 ①
『何でか頭ん中に残んだよなぁ、喋ってもないのに』と傾きかかった太陽を見上げおにぎりを食べ続けながら独りごちる御幸に後ろから急に首に腕が周りグッと締め付けられる。
『グハッ!』
『なーに黄昏てんの?ジジイみたいに』
『・・・ッ!ちょッ・・ちょっと!』
ボケッと完全無防備状態の時に後から来た奇襲にに対応出来ない御幸を愉快そうに口元を歪ませながら首を絞める小湊がそこに居た。ゴホゴホっと詰まらせそうになった米たちを咳ではらいのける苦しそうな御幸に大丈夫かよと一部始終を傍から見ていた倉持が駆け寄ってきた。
『りょ、亮さん、いきなり何すか』
咳き込んだ事で涙目になりながら突然の事に理解出来ていないといった顔で御幸は小湊を見た。
『気ぃ抜き過ぎてたから喝入れようと思って』
『それで首締めるやつがありますか!!』
小湊は悪びれること無くいつもの黒く含んだ様な笑みで『ボケッとしてる方が悪い』とからかうように言った。
『珍しいな、御幸が物思いにふけるなんて』
『熱でもあんのか?』
『皆俺をなんだとおもってんすかっ』
『悩み事か?なんだ頼れる先輩の俺に言ってみろ』
『何もないですって!』
結城も珍しいものを見るかのように顎に手を当てながら御幸を見、伊佐敷も馬鹿にしたように問いかけ始めた。
これは悩みに入るものなのだろうかと内心考えあぐねっている御幸だが、こんな事この人達に言ったらからかわれて終わるだけな気がした。