第1章 第一章 ①
夕暮れに近づきあたりも暗くなってきた頃休憩時間を挟み軽食の時間となっていた。
おにぎりを頬張り、空をみながら黄昏れている御幸の隣で主将、結城哲也はマネージャーである貴子に話しかけていた。
『どうだった?』
『良く働いてくれてたわ、器用だし覚えが早くて感心しちゃった』
結城の主語の無い問いかけに理解しているのか貴子は談笑していた。
そんな二人の会話が気になり耳を傾けている御幸を傍にワラワラと二人の会話に入っていく者達が現れた。
『なんの話?』
『小湊くん伊佐敷くんお疲れ様 新しくマネジとして入る子の話だよ』
『へぇー 可愛い?』
『昨日練習観てた奴の事か?』
『あぁ あの子ね』
『クールな可愛い子だよ』と答えた貴子は直ぐに苛めないでねと二人に釘を刺されていた。
やはり先輩達も気になっていたんだなと御幸は思う。立っているだけで人目を引いてたつばき を気にならない方がおかしいのではないだろうか。
それに三年からしたら貴子が同級生で唯一のマネージャーである訳で、後輩が入るか不安がっていた貴子を心配していたのだろう。
『最初は私の方が緊張しちゃって、ほら あの子モデルみたいに綺麗だから話しかけるのに勇気が必要で出だしちょっときょどっちゃったんだ』
てへっと照れ笑いする貴子にお前も相当可愛いよと三年組は思いながらも少し共感していた。
確かに身長もあって美人となれば少し引け目に感じてしまうしそれにつばき の感情の現れない表情に冷たさを感じ、同性と言えども近寄り難いだろう。
話に耳を傾けていた御幸も三年組と同じ事を考えつばき の事を思い出していた。