第1章 第一章 ①
先輩達は仕事を教えながらも雑談をして私とコミュニケーションを取ろうとしてくれていた。自分から話すタイプでは無い私としては有難い事でこんな無愛想な自分にも優しく接する先輩達の器の大きさを感じた。
中での仕事を一通り教えて貰った後はグラウンドに出て球拾いをしていた。
貴子先輩には最新の注意を払って拾ってねと言われたが、きっと流れ玉のことを言いたかったのだろう。
当たって怪我をしても自己責任だとも言っていた。
マネージャーの仕事は意外と体を動かす作業が多く、体力が無いとやっていけない。スコアラーをしたり偵察に行ったり日誌を書いたりするものだと思っていたが、それは試合の時のみで基本的には飲み物の補充、洗濯、ボール拾いやボール出し、ほつれたボールの修繕に草むしり等など1日じゃ終わらないんじゃないかと思わせるくらい沢山あった。
正直甘く見ていた面もあった
先輩達はこれを毎日部員のためにやっているのかと思い脱帽した。
先程の雑談の際、貴子先輩達が言っていたマネージャーをやる上で必要な事は【視野を広く持つこと】と【私たちは部員のお母さんだと思う事】らしい。
ボール拾いも視野を広く持つことで流れ玉に当たることも無いし、試合前は選手達がピリピリしてしまう事が多い。そんな時明るく振る舞いすぎてもいけないしかと言ってこちらがナーバスになるのもダメだ。
丁度いい距離感と言葉を選びながら声掛けをする事が大切らしい。
感情の乏しい自分には難関な問題に思えるのだが、先輩たちはこれからだと励ましてくれる。彼女たちもそれを乗り越えて今があるのだから『つばきもきっと段々慣れてくるよ』と元気づけられ今日の作業は終わりを告げた。