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ポートマフィア短篇集

第10章 これは異能の所為/※森鴎外


考えを巡らせていると、突然魅月が抱きついてきた。

今度は首に手を回したりせず、子供が親に抱きつくような、無邪気なものだった。

「…私、首領が好きなんです」

「…は、え?」

「好きで好きで仕方がなくて、ずっと言いたくて、こうしたくて、夜も眠れない日があったんです。任務を頑張れば、ここへ来て報告して、話が出来て…それがたまらなく嬉しかったんです」

今だけ、どうか許してください…消えそうな声でそう言った魅月は、さっきよりも強く鴎外の腰に抱きつく。

知らぬが仏と言うが、今回に限っては逆だ。何とも思ってなかった訳では無いが、魅月から聞いた以上、彼も冷静でいられない。
なぜなら、鴎外も魅月を好きだったからだ。
この関係値を排除して、魅月と密な関係になりたいと思ったこともある。

もうここまで来たら、止められない。

彼も魅月の方と頭に手を回す。彼女は一瞬だけ身を震わせたが、安心したのか深いため息をついた。

「…魅月、こちらを向いて」

素直に従った魅月の顎と後頭部に手を添えると、その整った唇に口付けを落とす。

そうだ、私はこうなることを望んでいたんだ…!
魅月は、嬉しくて嬉しくて腰が抜けそうだった。

どちらともなく口を開けると、鴎外の方が魅月の口内に舌を入れる。
彼女の全てに触れようと、舌を動かす度に魅月の肩が震える。

一頻り弄んでから離してやった。しかし魅月は、涙ぐんだ顔でこちらを見つめてきた。

「まだ、終わっちゃだめ…」

そう言って背伸びをすると再びキスをせがんできた。
ぼーっとした官能的な表情に、鴎外は釘付けになる。仕事人間から、すっかり「女」になっていた。
彼女の欲望に負け、鴎外はまた口付けを落とす。

今度は魅月の方から仕掛けてきた。
鴎外の唇を少しだけ吸い上げ、舌でなぞる。思わぬ感覚に、彼は「ん、」とくぐもった声を出した。

「鴎外さん…もしかして、キスだけで感じてるんですか…?」

「…ダメなのかい?」

「いいえ、とても嬉しいです。それに私…」

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