第8章 Save me/中原中也
言おうとした、のだから結局は言えなかった。
無造作に閂がかけられた鉄製の扉が、轟音を立てて部屋の中に飛んできたのだから。
部屋の中にいる2人は同時に扉があった先を見る。
月明かりにぼうっと照らされ、赤いオーラのようなものを纏った誰かがそこに立っていた。
身長こそ小柄だが、刺すような殺気が立っている。まるで修羅か羅刹のよう。
ふぅぅ、と大きく息をついた侵入者は、扉を蹴り飛ばしたであろう片足を地に付けると、くつくつと不気味な笑い声を上げた。
「なんだか楽しそうじゃねぇか…俺も混ぜろよ」
嘲るようにそう言うが否や、ドンと衝撃波を発生させながら疾風のごとく男を殴り飛ばした。
男は、飛ばされてる間に何が起こったのか理解出来ないまま、瓦礫に激突して絶命した。
その間、わずか1秒。
魅月の方も、状況把握ができないまま、悲鳴を上げかけた口を開けたままでいる。
その間抜けな顔を見た、ポートマフィア幹部─中原中也は、呆れたような顔をする。
「お前ざまぁねぇな…やっと見つけたぜ」
ズレた帽子を慣れた手つきで直すと、腕組みをしてにんまりと笑う。
「すみません、中原さん…。ほんとに、すみません…」
泣きそうな声で項垂れる魅月を見て、中也はため息をつく。
「そんな落ち込むなって。初めての任務だったんだろ?ここまでよく耐えたな」
ぽんぽん、と頭を撫でるように叩いてくる彼に、「え…?」と顔を上げた。
てっきり叱られるかと思った。完全に足手まといだったし、時間を取らせてしまった。しかも幹部の…。
彼は彼で持ち場があって、別の部隊などに指示を出すなど、とても多忙な人のはずだから。
どうして、なんで…。
「おまっ、泣くなよ…っ!?」
中也はやっとそこで、魅月の衣服がボロボロになってることに気がついた。
下着が普通に見えるし、肌も普通に見える。
当の本人はそんなことどうでもいいらしく、子供のように謝りながら泣きじゃくっていた。
あまり彼女の方を見ないようにしながら、中也は縄を解き始める。
拘束が解け、いきなり自由になった魅月は、腰を抜かしていたらしく、そのまま尻もちを着いた。