第8章 Save me/中原中也
魅月はなんとか心の平静を保とうと、とにかく必死だった。
早くなる鼓動に「さぁ私、落ち着いて」と呼びかけ、苦しいくらいに湧き上がる呼吸を震えるほど押さえつけた。
「さて、お前のとこのボスの異能を早く教えるんだ。」
きらりと光るサバイバルナイフを鼻先に突きつけられ、男は魅月に何度目か分からない質問を飛ばす。
口調こそ穏やかだか、魅月の「知りません」、「ほんとにわからないんです」という返答に内心イラついているようだ。
衣服は所々裂かれた跡があり、もうそろそろ限界が近づいているのは考えなくてもわかる。
ひゅう、と冷気が裂け目の隙間から吹き込み、鳥肌が立った。
「私、ほんとにあの組織の中では下っ端の下っ端…言うなれば土…いや地殻といっても過言ではないくらいの下っ端で、それはもう…ひぃっ!?」
御託を並べる魅月の白い喉元に、サバイバルナイフが食込み赤い線を残す。
白いワイシャツの襟がじわじわと染まっていく。
ここでもう、魅月の我慢が決壊し青い瞳からは生理的な涙が零れる。
両手足は縄で縛られ、もちろん逃げる術はない。
ジャケット、ワイシャツは綺麗に裂かれ、青い下着が僅かに漏れる月光に晒されている。
「おっと、間違えた。次はそっちを裂くつもりだったんだけどなあ…?」
ちらり、と男は露になっている彼女の胸元を、下卑た笑みを浮かべて一瞥した。
魅月の返答毎、衣服は次第に裂かれて風通しが良くなっていく。
「ひ、んぅ…もう、もう許してくださいお願いです!私、本当の本当に知らないんです!」
あぁ、私ったらなんて情けないの…。これじゃあいつまでも下っ端な訳だ。
ポートマフィア─憧れの戦闘援護部隊にやっと配属されたというのに、この様。
もっと強ければ、もっと頭が良ければ、こんなことにはならなかったのかもしれないのに。
後悔に後悔を重ね、魅月は項垂れる。
頭を左右に振りながら、情けなく懇願する魅月への我慢はほぼ限界に近づき、男は舌打ちを打った。
サバイバルナイフを握り直すと、顔を近づけて凄む。
「うるせぇな…お前は。いい加減に腹が立ってきたぜ。お前はもう用無しだ、殺す前に遊んでやるよ…」
その言葉に目を見開き、引きつった声を上げた魅月は、「やめて」と言おうとした。