第4章 Sweet time/森鴎外
初め、ぼんやりと森を見ていたのだが、急に弾かれたように、半身を起こして距離を取った。
「な、なんで…!?」
予想していた反応だったので、森の方は特に驚く様子もなく、なるべく手短に説明した。
「驚かせて済まないね。私は医者だから、安心して。診たところ、君は風邪を引いているようだ。あとは、薬を飲めばだいぶ良くなるとおもうから、飲んでくれるかな」
彼女に、粉薬の入った袋とコップを差し出す。
それを受け取ると、彼と薬を交互に見ては目線を逸らした。
「君が、あのお菓子屋さんから出て、倒れたところに偶然居合わせ、僭越ながら引き取らせてもらったよ。ここで少し休んだら、家まで送ってあげるから、どうか警戒しないでくれないかな」
そう言われても、彼女の方はまだ不安そうな顔をしており、一向に薬を飲もうとしなかった。
「申し訳ありません、このようなことをさせてしまって…」
か細い声で、彼女は言った。
そう、彼女はただただ申し訳ない気持ちと、情けない気持ちでいっぱいだった。
彼に迷惑をかけたことが1番ショックだった。
そして、こんな形で仕事外で関わってしまうことが。
もう店に来なかったらどうしようと、そんなことまで考えてしまった。
「そんな風に思わなくてもいいよ。私の方こそ、急にすまなかったね。君が治った頃に、また行きたいから、その薬、飲んでくれるかな」
やんわりと不安を取り除くように森は伝えてみるも、彼女は「恐縮です、ありがとうございます」と言うも、手に持っているものをじっと見つめるだけだった。
やはり心配なのだろうなと森は思うも、この薬は風に本当によく効くので、出来れば飲んで欲しいと思う気持ちとがごちゃまぜになる。
しかし、風邪薬くらい彼女も過去に飲んだことがあるだろうし、彼女がいつも飲み慣れている方がいいかもしれないと考え直した。
「やはりね、処方箋無しでもらった薬なんて心配だろうから、無理に飲まなくてもいいよ。飲みなれたものがあれば、そちらの方がいいだろうしね」
彼女はそれを聞いて目を丸くしたが、すぐに俯いてしまった。
「あ、すみません、私その…恥ずかしながら粉薬が未だに飲むの苦手で…」