第4章 Sweet time/森鴎外
ポートマフィア首領─森鴎外は、さてどうしたものかと考えを巡らせていた。
いつも自身が就寝用に使っているベッドに横たわり、荒い呼吸を繰り返す彼女を見やる。
数刻前。森は久しぶりにと、あのプリンが美味しいお菓子屋さんへ行こうと車を走らせていた。
今日は予定がなく、休日。
ボディガードも特に付けることなく、いつものよれた白衣で。
あともう少しで店に着く、という時に、フラフラと歩く彼女を見つけた。
顔色も悪く、足取りもおぼつかない。
元医者としての本能が考えるよりも先に芽生え、直ぐに車を停車する。
車から降り、彼女に駆け寄ったまさにその瞬間、彼女は倒れかかってしまった。
「大丈夫かい」
と声をかけるも、苦しそうな呼吸だけを続けていた。
とりあえず、処置を施さなければ。
彼女をさっと抱きかかえ、車の後部座席に横たえる。
運転席に座ると、すぐに部下に電話をかけて応援を要請した。
“ いつも世話になってる方が倒れたので、ビルの前で待機してて欲しい”
そう短く伝えると、なるべく早めに、安全運転で…と心がけながら車を走らせた。
ビルに着き、後部座席に横たわる彼女を見た部下は目を丸くしたものの、「彼女を、私の部屋まで運んで」と伝えると、部下はすぐに了承した。
部屋に着いてからは早かった。
慣れた動作で、彼女の熱を測り、脈を取り、元医者としての経験が最大限に生かされていた。
さてあとは、薬の投与か。
白い袋に入った粉薬を出し、コップにぬるま湯を用意した。
あとは飲んでもらうだけ。
驚くかもしれないが、声をかけて起こしてみようと、森は魅月に近づいた。
斜め横に顔を向け、眉間に僅かに皺を寄せ、口を半開きにして呼吸をする様子に、森は自身の心拍数が上がるのを感じた。
これはきっと、彼女に何かしらの感情を覚えているのだろうと、客観的に考えてみるも収まることは無かった。
深呼吸してみても、心拍数は早くなるばかりで全く意味をなさなかった。
意を決して、彼女の肩を優しく叩いてみる。
「失礼。薬を飲んで欲しいのだけど」
少し違う表現にも取られるかなと、思ったが時すでに遅く、彼女はうっすら目を開けた。