第9章 男と女、約束の交わし方
操縦室へ戻る道。
銀時は皐月の背中を見て、懐かしい想いを思い出した。
昔、淡い気持ちを皐月に抱いていた。
初めは、苦手だという意識から入った。死体にうもれながら生きてきた汚い自分には眩しいくらい美しかったからだ。近寄っていいもんじゃねぇ、と思っていた。
それがあの夜血に濡れた皐月を見て、間違っていたことに気づく。自分は皐月の外面しか見ていなかった、と。
皐月が消えた、夕焼けの綺麗なあの日。
耳に俺がテキトーにやった夕顔の花をさして、綺麗に笑った。その時に思った。こいつはずっとそうやって笑っていれば良い、俺の隣で。
あいつが抱えてたもんを見てなかったのは、俺だ。
ただ一緒にいたい、と言ってくれたあいつを守れなかったのは、俺だ。
先生を連れていかれ、学舎を燃やされて。
あの炎の中にその気持ちを落としてきちまった、そう思っていたがどうやら名前がちゃんと付いていたらしい。皮肉なこった。それに気づいた時には、こいつは俺の前じゃもう泣くこともできない。
「……どうした?ついたぞ、銀時。」
今度は離しやしねぇよ。
昔自分がやらかした事、片すのはてめぇのやる事だ。
こいつを、もう一度笑わせてやれない様じゃ俺は男じゃねぇ。
「おー。」