第9章 男と女、約束の交わし方
到着した星は、捨てられた星とも呼ばれている烙陽。
降りてみればなんて事はない、馴染みのある匂いに、馴染みのある戦場。初めてきたのに地球より比べ物にならないくらい過ごしやすかった。傘をさす必要もない。
船を降りてすぐ、奥の廃寺院へ向かっていく彼らを見ながら思う。
人間は、やはりあまちゃん集団だな、と。
あの後、操縦室へ戻れば、桂とのお話が待っていた。
奈落の事、虚の事、春雨の事。
皐月はその問いにうまく答え続けた。
「僕は長らく春雨に密偵としていた。こんな下っ端は上司について行くだけであった。申し訳ないが、殆ど知らないんだ。今回も上からの命で将軍と来ただけだ。」
ただの役立たずだ、というと、その場にいた同胞は攻撃を仕掛けてきた。きっとあの鼻だけは騙せなかったのであろう。坂本によって止められなければ、星へ船を落とさなければならなかった。
皐月は服から連絡機器を取り出す。
「こちら霞。ただ今松陽の弟子二人と桂浜の龍到着致しました。将軍も同じく。奥の廃寺院に向かっているようです。」
まだこちらへ着いていない奈落の船への通信。朧からの返事は早かった。
「ご苦労。部隊到着まで待機だ。」
ぷつん、と切れる機械に皐月はこれで良いのだ、と思う。
爆破されて行く建物。次々と到着する春雨部隊。
生き残るのは侍か、天人か、それとも奈落か。
どうなろうとも、皐月に出来ることはただ一つ。
虚の元へ、松陽の弟子達の刃を持っていくことだけだ。