第9章 男と女、約束の交わし方
騒いでいる男たちの中、皐月は静かに坂本の前へ立った。
「僕はずっと会ってみたかった、坂本辰馬。君とは楽しい話ができそうだ。」
そう言いながら彼女は坂本に微笑んで見せる。まるで字面ほど可愛らしいものではなかったが、今までの冷たい表情からして見れば、それは華が咲いたかと思うほど美しい。そんな皐月を目の前にまた騒ぎ出す坂本と彼女の間に、銀時が割って入った。
「いやいやいや、さすがにこれ、ちょ、お話は銀さんとするのが先でしょ。そろそろ関わっとかないと、気づいたら最終話来ちゃうからね?俺とのせっ○すとばして子供産まれてハッピーエンドとかになっちゃうからね?つかてめぇ天パ好きか?!天パなら銀さんじゃなくてもいいのか?!あ"?!」
身振り手振り激しく喋る彼に皐月は至って興味なさげに聞き流す。確かに彼と話をしにはきたが、馬鹿が輪をかけて馬鹿になっていたらしい。
「銀時、一つ良いことを君に教えてあげよう。男の恋愛は、名前をつけていつまでも胸にあるものだが、女の恋愛は新しい男で上書きして始まる。」
「なにこの子?!宇宙で何見てきたのこの子!!」
絶望に打ち拉がれるように膝から崩れおちる銀時。
さすがにこれ以上はかわいそうな様子であった。やっとのしっかりした登場にも関わらず、叩きすぎた様だ。
呆れた様に、桂が助け舟を出す。
「俺も皐月とは、積もる話もあるがな。今回はお前に譲ろう、銀時。おい坂本、ここは俺が預かる。貴様はこの男を何とかしてくるといい。」
ずっと倒れていた喜喜の首根っこを掴み、坂本の方へ投げると、銀時の肩に手を置き耳元で囁いた。
「銀時、わかっているな?」
「……あぁ。」
ぜってぇ、一発決めてくる。
「いや、そうじゃなぁぁあああい!!」