第8章 好きな人へのプレゼント選びは慎重に
生きたいか、
何て問われても皐月は分からなかった。
生きているという状態に興味はない。
だが、ただ自身を唯一満たせる戦場にいたい。
屍の上にたった彼女は、血や業を通り越してうつろな匂いのする目の前の化け物について行けば、その戦場に立ち続けられると本能で感じ取った。
「……いきたい。」
皐月は虚と行くことを決めた。
そうして奈落の烏に育てられ何年か。
虚が失踪した。
頭が失踪したとあって、奈落総出の大捜索となった。
皐月も、名を"霞"と与えられ、もれなくその捜索に参加した。
毎日毎日、昼夜問わず、隅から隅まで探していた、ある日の夜中のこと。一人の子供が、虚の刀を腹に刺した状態で現れた。
もうあの人は誰も殺さない、と。
何を言っているのか分からなかった。
他を殺さず、どうやって生きていくと言うのか。
そう考えていた彼女は上から降ってくる巨大な岩に気付けなかった。
だが、こんなもので潰れるほどやわでも無かった。
指一本あれば岩なんて、豆腐の様に割れる。
反応に遅れたせいで他の烏を潰すことにはなったが、そんな事を一々気にかける様な事はしない。
ふと、皆死んだはずのその場に、自分以外の気配を感じた。
その気配も変なものだった。どこから現れたものでもない。隠れたものでもない。
無かった場所から、湧いて出た様な気配。
違和感のまま、その気配を感じた岩を砕いて皐月は驚いた。
「……人間も、多少は丈夫にできているのか。」
彼女は死の淵から蘇ったであろうほぼ肉片の子供を抱え、襲撃に遭った、と他の軍と合流し、子供の事実を隠したのだった。