第6章 男のタマは時に刀でも切れない
皐月が大きな選択ミスに気づいた時。
それはもう取り返しのつかない所まで来てしまっていた。
地球を離れてしばらく。
皐月は春雨に所属して、案外奈落にいた時よりも動きやすくなった事に気付いた。立場を良いように利用して、彼女は遠く離れても彼らの様子を伺っていた。決してストーカーではない。生物は皆、愛を追う戦士なのだ。
だから。
あの松下村塾に火を放ち、吉田松陽を捕らえたと聞いた時、彼女は目玉が落ちるかと思った。
「どういう事だ。ありえない。どうして。」
あの人は朧の師のはずた。
だからこそ、奈落や役人たちの目を晒していたのだ。松陽が選んだ道を、生きる場は違えど朧は支えていた筈だ。
それを何故今更…
しかし、銀時たち門下生が捕まった、殺された等の情報はなかった。これが、大穴だった。
結論、皐月はあの人が捕まろうが、松下村塾が燃えようがそんなに重要ではなかった。彼女の優先順位の一番は何者でもない、坂田銀時だ。彼女は地球から離れたせいで、彼が生きているという状態に固執し過ぎてしまっていた。
その坂田銀時が、一番大切にしているものが何か。
彼女はわかっていなかった。