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夕顔

第6章 男のタマは時に刀でも切れない





急な話だった。

「もう、あの人の事はいい。新しい仕事をしてもらいたい。」

早朝、珍しくカラスの伝言があり、その通りの場所に行けば朧が待っていた。

「……もう、いいとは。」

「言葉通りの意味だ。」


天照院奈落の頭が突然子供を連れて来たかと思えば、突然二人姿を消し、その後子供だけまた戻ってきた。
それが朧。
そうして、頭なき奈落をあの人に代わって朧が率いてきた。


天導衆に目をつけられ、奈落に攻め入られた天人の船に乗っていた皐月もまた、あの人にそこで拾われた身。
何故あの人が奈落を抜け出たのか。あの人が何と戦っていたのか。

朧に言われるがままに始まった任務に、彼女は多くを見つけすぎてしまった。朧は、それに気付いていた。

だが、朧がまたそんな師の隣に戻るために皐月を任務から外し、よもや師を殺してでも、もう一度奈落に戻そうと企てていたなんて、彼女は読み切れなかった。


突然与えられた新しい任務。
それは任務という名の下、あの人の事を知りすぎてしまった自分を奈落から遠ざけるものだったのだ。

「宇宙最大犯罪シンジゲート春雨に、席を用意した。今後数十年に大きく影響する任務だ。」


皐月の頭を占めたのは、これからの事でも、あの人の事でもない。
まさか、昨日で会うのが最後になるとは思わなかった銀時の事だ。


「…でも、密偵の仕事か。」

もう、あんな事するなと銀時に言われてしまった。
もう、あんな事はしないと一方的に誓ってきてしまった。

「………一緒にいたいなんて、」

無理な話だったんだ。

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