第6章 エピローグ
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「父の作った兵器は……一体なんだったんでしょうか」
千代は、フィアットの開いた窓から吹く風に当たり髪を靡かせながら小さく呟く。
そんなことを呟く千代の隣にいる五ェ門が、悲しそうに彼女を見つめた。
「……考えるんじゃねえよ」
「父は……あんな兵器を作ったがためにあの人に殺されたのに」
溜息をつく千代に気づいたルパンは、ラジオをつけジャズを流す。
「人生なんてこんなもんさ、千代。自分が望んでいなかったことが起こる。だから面白いし、自分で変えていくしかないんだ。お父さんが望んだ世界にならないように千代がするんだよ」
「私がですか?」
「そろそろ家に着くぞ。うーんそうだな…また誘拐されたら身もこうもないし送って来てやれよ、次元」
「うむ」
「ええ、なんで俺がぁ!?」
「千代は別に構わないよな?」
ルパンは千代にそのあとの返事をしなかった。
彼女は自分たちとは違って普通の女の子だ。
返事をしなかったのは、自分の論理を千代に押しつけてはいけないというルパンの優しさ。
車内でどこか懐かしいジャズが流れる中、気づくと周りは千代にとってどこか見慣れた街並みだった。
「……ここは」
「ほら、次元送ってやれ!」
千代がフィアットから降りるとそれに続いて次元が降りた。
窓から顔を覗かせるルパンと五ェ門に笑いかける千代。
「ルパンさん、石川さん。ありがとうございました」
「いいってことよ、こっちこそいろいろ巻き込んじまったな。もう誘拐されんじゃねえぞ!」
「さらばだ、千代殿」
次元が歩き出すのに気づいた千代はルパンと五ェ門に手を振ると、少しだけ距離を空け、彼のあとについていく。