第1章 プロローグ
「……次元さん?」
あれから彼女は街で一度だけあのルパン一味を見かけたことがある。
あの日から一週間くらいが経って学校が終わった帰り道、友達と帰宅している途中だった。
パトカーに追われている見たことのある黄色い車が彼女と友人の側を勢いよく通って行った。
「 千代、どうしたの?」
ーー私、次元さんたちについて行きたい。
''お前さんは俺となんかいちゃいけない"
ーー次元さんがいなきゃ私、また一人ぼっちになっちゃうよ!
''大丈夫だ、嬢ちゃん。お前さんはまだ若い。やりたいことが見つかればなんだって努力次第でなんにでもなれる。とにかくこの世界に臆病になるな。俺たちみたいな影になっちゃいけないんだよ"
最後、別れのときにくれた彼の言葉が頭の中でリフレインする。
確かに彼には父親といたときのような安心感を覚えた。
だが、この気持ちは気づいてはいけないものだったのだ。
千代は笑顔で振り向くと、遠くに走って行くフィアットを見つめる。
「ううん、なんでもないの。むしろやりたいことが見つかったから清々しい気分かな!」
「ええっ、なんだそれ」
千代の言葉に友人が困ったかのように笑った。
''俺がまた傷だらけになったとき今度は手当てしてくれ"
彼らについていけないのなら、彼の言葉に生きる意味を見出すしかなかった。
そう、これはきっと彼女の初恋。
これから人生のページが更新されるたび、この初恋は思い出すことになる。