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【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】

第56章 ◇第五十五話◇もう二度と戻れない日常【恋の行方編】


左頬に斜めに3㎝ほど出来てしまった切り傷は、傷口も浅く痛みもそれほどなかったので医務室には行かなかった。
傷が浅いといっても顔に傷が残ってしまってはいけないからとハンジさんからは消毒くらいするように勧められたけど、それも断って、私は訓練に励んでいた。
調査兵団に入ったのだから、怪我くらいで騒いでいられない。生きていられるだけで有難いのだと、私は親友に教わった。
それに、顔に傷が残って困ることなんてない。
たとえば、好きな人に少しでも綺麗だと思ってもらいたいとかあるのなら違うかもしれないけど、好きな人に嫌われてしまっている私にはどうでもいい話だ。

「よし!1回、休憩に入ろうか!」
「はいっ!」

ハンジさんの一言で、息が上がった返事をした班員達が一度に地面に降り立った。
疲れて倒れこむ班員達と一緒に、ひときわ体力のない私も木の幹に寄りかかって座り込んだ。

「怪我は痛まないか?」
「ひゃぁっ!」

木の幹の後ろからひょっこりと顔を出して、私に変な悲鳴を上げさせたのはミケ分隊長だった。
驚かせたことを詫びた後、彼は私の隣に腰を下ろすと、もう一度、傷の具合を訊ねた。

「全然、大丈夫ですよ。」
「そうか、ならよかった。」

安心したように呟いたミケ分隊長は、胸元のポケットから何かを取り出して私の目の前に差し出した。
何だろうと覗き込んで見てみれば、それは絆創膏だった。

「傷口が汚れて黴菌が入ってしまったらいけない。
 これを貼っておくといい。」
「ありがとうございます。」

ミケ分隊長がそういうことに気がつくのは意外だったけれど、優しさに甘えて絆創膏を受け取った。
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