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【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】

第56章 ◇第五十五話◇もう二度と戻れない日常【恋の行方編】


訓練場に戻ってきたところで騒動に気付いたフロリアン達も、近くにいた他の調査兵達も駆け寄ってきて、無事だった私に安心しているようだった。

「あちゃ~、でも、頬切っちゃったみたいだね。
 あれくらいなら避けられただろ。お腹でも痛かった?」

膝を折り曲げて腰を下ろし、ハンジさんが私の頬にそっと触れた。
そういえば、頬がヒリヒリと痛いような気もする。
でも、私は傷なんてついていないはずの胸が痛くて、兵団服のシャツの上から握りしめる。
ハンジさんが焦った顔で叫んだとき、隣にリヴァイ兵長もいて、見開いた瞳と目が合った。少なくとも、私はそう思った。
そして、愚かにも待ってしまった。
リヴァイ兵長が、助けてくれるのを。
今までみたいに、いつもそうしてくれていたみたいに、誰よりも先に私に駆けつけてくれるって、愚かにも信じてしまってー。

「え!?どうした!?痛い!?どこが痛いの!?お腹!?」

急に泣き出した私に、ハンジさんが慌てふためく。
私を腕の中に抱きしめるミケ分隊長もオロオロし始めて、超硬質スチールを飛ばしてしまった先輩兵士が必死に頭を下げてくる。
集まった調査兵達が、私に大丈夫かと声をかけてくる。
でも、そこにリヴァイ兵長だけがいない。
助けてくれたミケ分隊長の腕の中から、こちらに駆け寄ってくるハンジさんが見えたとき、私に背を向けて去っていくリヴァイ兵長の後姿を見てしまった。

(もう、本当に…嫌われてるんだな…。)

せめて部下だと思ってくれているなら、心配してくれると思った。
それを確かめるためだけに、大怪我どころか死ぬかもしれない行動をとって、ハンジさん達を心配させる愚かな部下なんて、リヴァイ兵長はきっともう要らないのだ。

「う~っ、ひっく、ひぃ~んっ。」

まるで、母親に捨てられた幼い子供みたいに、両手の甲で必死に涙を拭いながら泣き出した私に、ハンジさん達は慌てふためくばかりで。
そこにリヴァイ兵長が現れることはなくて、私はやっぱり子供みたいに泣いた。

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