【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第50章 ◇第四十九話◇お手伝い【恋の行方編】
「リヴァイ兵長は、お休みの日にご実家に帰ったりするんですか?」
さっき、家族のことが少しだけ話題に出たことで、なんとなく思っただけだった。
リヴァイ兵長のことを少しでも知りたかった。
「帰れるような実家がねぇからなァ。強いて言うなら、地下街か。」
「それって、王都にある地下街のことですか?」
ウォール・シーナの地下には、遠い昔に巨人から逃れるために作った巨大な地下街があると聞いたことがある。結局、移住は中止されたため、残された廃墟はスラム化し王政からも見放された無法者たちの住処になっているらしいがー。
「街なんて呼べるような場所じゃねぇがな。」
リヴァイ兵長のそれは、冷たく突き放すような言い方だった。
そういえば、ペトラが、リヴァイ兵長は昔はゴロツキだったと言っていた。もしかしてー。
「もしかして、地下街で不良だったんですか?」
「あそこで不良なんて可愛いもんやってたら、生きていけねぇよ。」
「何をしてたかは聞かない方がいいですかね。」
「聞きてぇか?」
挑戦的な目でリヴァイ兵長が意地悪く言う。
「やめておきます。
でも、それがどうして、調査兵団の兵士長にー。」
兵士長になることになったのかー。
聞こうと思ったけれど、私はあえて口を噤んだ。
「やっぱり、言わなくていいです。」
「別に話せねぇようなことではねぇが?」
「でも、リヴァイ兵長がなんだか悲しそうな顔をしたから。」
言いながら、まるでリヴァイ兵長の悲しみがうつったみたいに、私の心の中も悲みが侵食していくようだった。
驚いた様子のリヴァイ兵長は、自分がどれだけ悲しそうな顔をしたのか自覚がなかったのだろう。
私が何を訊ねようとしているのか悟っただろう瞬間に、傷ついたような瞳でどこか遠くを見ていたなんて、気づいてもいないのだろう。
目の前にいる私じゃなくて、遠いどこを見ていたのだろう。
本当は知りたいけれど、私には、勝手にリヴァイ兵長の過去の扉を開ける権利なんかない。
でも、もしもー。