【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第47章 ◇第四十六話◇おかえり【調査兵団入団編】
恐ろしい予感にサーッと血の気が引いた私の身体が重力に逆らって飛び上がった。
スカートの裾が風に舞っているのが見えて、恐怖に顔が引きつる。
まさか、が当たってしまったー。
「しっかりつかまってろ。」
チラリと私を見たリヴァイ兵長が言ったけれど、そんなの言われなくても必死にしがみついていた。
いつもは立体起動装置があるし、恐怖を感じる暇もないくらいに生きるのに必死だから飛べるけれど、こんな無防備な状態では、恐怖以外のなにものでもない。
リヴァイ兵長は片手で私の身体を支えながら、もう片方の手でうまくアンカーとワイヤーを操って、どんどん飛び上がっていく。
50メートルの壁をー。
リヴァイ兵長の技術なら、壁を上りきるまでほんの数秒だったのだと思う。
でも、体感時間はもっともっと長かった。
「おりねぇのか。」
壁の上に降り立ったリヴァイ兵長は、首に抱き着いたまま動かない私が不思議だったようだ。
でも、それよりも、何の説明も無しに、兵団服ではなくスカート姿の女をこんなところに突然連れてきて、澄ました顔をしているリヴァイ兵長の頭の構造の方が不思議で仕方がない。
それとー。
「腰が、抜けました…。」
降りないのではなく、降りれない理由を正直に告げた。
そんな私を、リヴァイ兵長の蔑んだ目が見下ろす。
調査兵のくせに腑抜けやがってーという心の声まで聞こえてくるようだった。
だが、ここは、私は悪くないと思う。絶対にー。
「…すみません。」
恥ずかしさと情けなさから解放されたくて、私は素直に謝った。
チッと舌打ちをして、リヴァイ兵長は私を壁の上に降ろした。
好きな人と密着していた緊張と、落ちたら死ぬという緊張で強張っていた身体の糸がようやく解れて、私はそのまま背中からゆっくりと倒れこんだ。