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戦国ヒロイン【織田家】

第3章 時代の革命児


翌日のことだった。松平主従は朝早くから那古野城に来ていた。どうやら信長様と竹千代殿は、鷹狩りをする口実を結んでいたようだ。この話だけ聞くとただの子供たちの遊びと同じ感覚だ。

信長様は最低限の別の側近を連れて行った。信長様たちに何かあっても守ってくれる筈だ。
那古野城に残ったのは俺と義春殿だけだった。

「こうも和やかだと戦国ということを忘れてしまいそうだ」

「たまにはこういった情景に浸るのも大切だろう。戦国に生きる我々ならば尚更のことだ」

義春殿とは1尺ほどの距離を保ち縁側に座っていた。多く語ることも無い。互いに気を使うことも無い。どうやら、先日談ずることで心の距離が互いに縮まったような気がする。
しかし、改めて見るとやはり妙な女性だった。

相変わらずボサボサの黒い髪。綺麗に焼けた肌。胸元が緩い服を着て、覇気がない瞳。だがその瞳からは聡い何かが感じられる。

「…いつか私たちが織田家に従属する時があれば、宜しく頼むぞ」

「同盟ではなく従属か…。それでいいのか?」

「それが私たちに合っている。例え対等になろうとして、どれほど力をつけようと織田家には叶わない。そんな気がするんだ」

「尾張は弱兵しかいない。今最も天下に近い“海道一の弓取り”に勝るとは思えないが」

「信長殿の人を束ねる能力と、頼継殿の軍略が組み合わされば、大どんでん返しが出来ると確信している…」

「この世には思いだけではどうにもならないものがある。聡明な義春殿ならば理解できるだろう?」

「確かに、私たち軍師はいかに少ない犠牲で勝利をもぎ取れるかを計算しなければならない。他のどの役割よりも頭を使うもの…。しかし頼継殿、私は数字だけが全てではないと思っているよ」

「それはそうだろう。陣形や策を駆使すれば…」

「いやいや、そのような話ではないよ。家臣団との絆がこの世の理よりも遥かに優れているかもしれない…ってことさ」

そんな摩訶不思議なことを信じるなんて軍師ではない…と一蹴できた筈だろうに、何故か本当にあるのではないか…と思ってしまうのは彼女が発した言葉だったからなのか。これも摩訶不思議な出来事の一つだろう。
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