【IdentityV】ゲーマーでオタクで何が悪い【第五人格】
第2章 こんにちはサバイバーの皆さん
扉を抜けるとそこは戦場だった。
川端康成の雪国、最近読んでないなーと現実逃避するのにも無理は無いと思う。
厨房に入ったはずなのに機械がそこらじゅうに散らばってるし、部屋の隅でうずくまってる人はいるし、火の調節間違えたのか焦げ散らかしてる材料だったもの達はあるし。
入る前にとてつもない音がしたからエミリーさんには自室へ戻ってもらった。うん、これはあのエマちゃんが不味いって言うわけだわ。
「……ふぅ」
「こらぁああ!食べ物を祖末にすんな!!機械を置くな!衛生面考えろ!!そこでしゃがまない!!火の調節考えろ!!」
怒号が響くと二人とも固まった。
うん、いやごめんよ。
「……ごめん、はじめまして。今日から配属になりました悠斗です。調理場の方がやばいと聞いたのでお手伝いに来ました。とりあえず片付けさせてください」
ぺこりとお辞儀して3秒後、即座に落ちている機械の部品やらをまとめる。
わかる、わかるよ。たまに夢中になりすぎてゲームとかやりながら料理したくなるの。昔親父にめっちゃ怒られたけど。
二人が固まっているあいだに無言でさっさと機械類を纏め、ずいっとトレイシーちゃんに手渡す。
「自己紹介は後で聞きます。とりあえず夢中になるくらいなら自室で遊んできてください。楽しいときは他のことをすべきでは無いので。他のことに囚われず楽しむべきです。ね?」
ニコリと笑顔をうかべるが、我ながらきつい言いくるめをしたと思う。だってこれ以上ここに居たら怪我しかねないし。
トレイシー「いいの?!うん!!ありがとう!また後でねっ!!」
そう言うと数秒立たずして部屋を出ていく。そんなに遊びたかったんか。
……にしても掃除が行き届いていないからか、汚い。ゲームして疲れて戻ってきてすぐ調理となればそれはそうか。
……汚いところで調理するわけにも行かないし。とりあえず片付けながら調理をしよう。
「……あの」
イソップ「ひっ?!」
「ご、ごめんなさい。……あの、自室に戻っても大丈夫ですよ。料理、できるので。人が苦手なのは何となく察しました」
ううん、我ながら本当にいいくるめが下手くそすぎる。
イソップ「……すいません。……お言葉に甘えて失礼します」
そう言うと足早に消えてった。うん、なぜこのペアにしたし。
「……具材残ってるかなぁ」
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