【IdentityV】ゲーマーでオタクで何が悪い【第五人格】
第3章 ハンターに会いに行こう。
鼻歌のような、綺麗な歌声が聞こえるが、リッパーではない事が分かり、一層身をひそめないといけなくなってしまった。
リッパーには捕まったら終わりですよ、的な釘の刺され方をしたが、あながち間違いでもないかもしれない。心音が止まらず、怖いという感情しかわかなかった。ゲーム外では心音は適用されないと話されたが、嘘だろ。
ピタリと鼻歌が止まった。
『誰かな。僕の近くに居るのは』
怖い、とてつもなく怖い。
声でわかってしまった。写真家ジョセフだ。となると一番最悪な想定は、無理やり隠れている所を出されるモーション。あれ一度心臓付近、刺されてるんだよ。よく見たら。
声を潜め、じっと耐える。出ていく度胸は俺にはなかった。
するとカチャリと何かを動かす音がし、数秒後、扉がしまった音がした。
……
もう出ていい頃合だろうか?
そう思いひょいと顔を出す。
廊下には誰もいなかった。
「……ふぅ」
気崩れてしまった着物を整えようと、廊下で身支度を再度整える。
すると心音がいきなり跳ね上がり、首元には長い刃が添えられていた。
一瞬のことで動きを失った。何も出来なかった。
「……ッ」
ジョセフ「……誰?君。見たところハンターでは無さそうだし、僕のカメラに反応するってことは、君新しいサバイバー?」
そうかカメラ。……やられた。何してんだSランカー。ジョセフは背後注意だろ。弱い頃何回恐怖を貰ったことか。
……すっかり忘れていた。さっきの音はカメラの起動音か。
「……」
ジョセフ「何も答えない気?」
すいません、答えないんじゃなくて声が出ないんです。恐怖感で。チキンなもので。
しかしそんな気持ちも次の言葉で翻った。
ジョセフ「サバイバーが。それも女性が一人でこんなところに乗り込んでくるって、君命知らずだよね」
その言葉を聞いた瞬間に身体が不意に動いていた。
頭が理解するより先に身体が動いていたと言うやつ。いつの間にか俺はジョセフの後ろに周り、首後ろに小刀を構えていた。
所謂形勢逆転というやつ。
ジョセフ「!」
「……俺は男だ、馬鹿」
声が裏返るし、首後ろに回した小刀はぷるぷる震えてるし、恐怖から涙が出そうだけど、怒ったぞ。男だ。こんな身なりだが男だ。
……けどごめん、これからどうすればいいんだ俺。