【IdentityV】ゲーマーでオタクで何が悪い【第五人格】
第3章 ハンターに会いに行こう。
はいと返事をしてから数秒が経った。
ギィ
と鈍い音がなり、恐らく扉が開いたのだと察した。
『代償はその面を見せよ。何、我を見て自我を失う恐れさえも忘れたわけでは無いだろうな』
正直その言葉を聞いて、安心感しかわかなかった。
何故なら俺は目ん玉いっぱいとか深淵とか、興味しかなかったからだ。むしろこの目で見れるなら見てみたいとまで思っていた。
躊躇なく目隠しを外し、声のするほうを見る。
真っ黒い何も映さない深淵と、赤黒い無数の目玉。黒いローブに、お世辞にも綺麗とは言えない包帯の巻かれた赤い手。触手。
素直に男心としてかっこいいと思った。
はいそこ、変とか言わない。
「かっこいい……」
ハスター「……」
「あっ」
心の中でとどめようとしていた欲が出てしまった。無言が痛いです。
「……あ、あの。リッパーさんに用事があって、開けてくださりありがとうございます。その、これだけじゃ私にとって代償にはなり得ませんので、今度お礼致します。そ、それではっ!!」
恥ずかしさがMAXになって空いている扉をつっきってしまった。
後ろから追ってきてはいない。よかった。
ハスター「我を見て高揚する人の子か、ふむ。あの面、実に気に気に入ったのだ。」
そんなつぶやきは、突っ走った彼には聞こえていない。
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「……迷った。広すぎ」
はい、案の定迷いました。くっそハスターめ。(理不尽)
扉には英語ではない文字で書いてあったり、読めなかったり様々だ。
しかし来る方向は間違えてはいないみたい。
女性と男性の部屋は距離があるみたいで、部屋の見た目的にこちらがハンターの男性の塔だと予想した。
こんな豪勢に作り込まれていたら部屋までハンターごとに違いそうだよね。
リッパーって確かジャック・ザ・リッパーだっけ、と頭をぐるぐる回転させて廊下を歩く。
すると不意に目の前の扉が開いた。ドクンッと心音が跳ね上がる。ゲームでもないのに跳ね上がらせる恐怖感は、やはりハンターだと思わせられる。
そのまま恐怖感で立ちつくす訳にもいかないので、咄嗟に花瓶が置いてあった小さな箪笥に身を潜めてしまった。
隣においてあった甲冑の方にしておけば良かったと気づくまでそう時間はかからなかった。