第2章 ②
守山…別に知らない訳ではない。同じ学年。クラスは違えど名前と顔くらいは知っている。
吹奏楽部の部長、守山大翔(もりやまひろと)。イケメンとまでは言わないが真面目で優しく女子生徒にそこそこ人気がある。
春の選抜に出場したときもアルプスに吹奏楽部が来てベンチ入り出来なかった部員や応援に駆けつけてくれた生徒と一緒に応援してくれていた。そういやクラリネット吹いてたっけなぁ…
クラスメイトに連れて行かれた永原と離れ、そんなことを思い出しているともう玄関まで来ていて突然、尻を蹴られた。
「ヒャッハー!どうした?珍しくボーッとして!」
「いきなり人のケツ蹴ってんじゃねぇよ!」
「練習ではボーッとすんなよ!」
「分かってる!」
ったく…と頭を掻く御幸に倉持が少し驚いたのは他でもない。本当に御幸が、あの御幸一也がボーッとしていたのだ。
御幸はサッカーはド下手だが普段から隙なんてあまり見せない。じゃれあうことはあるがいつも御幸の方が一枚上手。
キャプテンとして、頼れる先輩として部員から慕われ、教室ではいつもスコアブックを読んでいるか寝ているかだがクラスメイトとも程よい距離を保っている。
腹が立つことにその端正な顔立ちとストイックに野球と向き合うその姿からはっきり言って女子人気はかなり高い。
ほとんど女子生徒は御幸の出す近付くなオーラに負けて遠巻きに眺めているだけだが、中には連絡先を聞いて来たり、ストレートに告白している者もいる。
もちろん、その全てを御幸は断ってきた。