• テキストサイズ

碧空(あおぞら)【ダイヤのA】

第7章 ⑦


ははっ…乾いた笑いが二人きりの屋内練習場に響く。

ゆっくりキャッチャーマスクを外すと沢村に近付いた。自分を見上げる沢村は真っ直ぐに見つめ続けている。その額に思いっきりデコピンしてやった。

「いってーー!何するんすか!!」
「バーカ。何勝手に人の心覗いてんだよ。心配しなくてもお前らのことは信頼してるよ。じゃなきゃ甲子園なんて…全国制覇なんて目指せないだろ?」

「でも…」
「まぁ、でもそうだよな。ちゃんとケリ着けないとな。いつまでもこうしてる訳にもいかねぇよな。心配すんな。本選までには決着つけるよ。」

「その時にはこの沢村栄純……!」
「バカ!お前は入ってくるな。バカ。余計にややこしくなる。バカ。」
「今、2回もバカって言いやしたね!?」
「バーカ。3回だよ。」
「ぬぉぉぉ!また!!」

それは久しぶりの御幸の心からの笑顔。崩れそうな心を支えてくれるのはやっぱり信頼できるチームメイト。可愛い後輩。そして……

沢村とじゃれ合いながらも御幸の目線はチラリと外に向いた。そこには屋内練習場から遠ざかる背中。

「ありがとな。倉持。」
「ん?なんすか?キャップ?」
「うるせぇ!さっさと10球投げろ。」
「よーし!ではナンバーイレブンいきやす!」

もう一度キャッチャーマスクを被るとしっかりと構えた。
ボールがミットに収まる乾いた心地好い音が響く。
足掻きながらも御幸は前に進もうとしていた。
    
/ 35ページ  
エモアイコン:泣けたエモアイコン:キュンとしたエモアイコン:エロかったエモアイコン:驚いたエモアイコン:なごんだエモアイコン:素敵!エモアイコン:面白い
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp