第1章 ①
始業式が終わると担任と共に一人の女子生徒が入ってきた。倉持の言った転校生が本当にいたのだ。
「はーい!静かに。今日から転校してきた永原
だ。みんな仲良くしてやれよ。」
男性担任の通り一辺倒な紹介のあと、頭を下げる女子生徒。
「永原碧です。親の仕事の都合で転校はしょっちゅうしてきました。だから、特技は適応力。よろしくお願いします。」
どこからともなく拍手が起こると担任が指差したのは御幸の隣の席。
「御幸の隣がお前の席だ。」
担任を見て軽く頷く永原。一歩、また一歩と自分の席に近付く。
3年生らしからぬ真新しい制服と学校指定のスポーツバッグ。ここにいる誰もが入学してきた時はそうだったが今は3年生。良くも悪くも馴染んでしまっている。
クラスの視線を一心に集め永原が辿り着いた御幸の隣の席。
だが、当の御幸は話しは聞いていたが然して興味もなく相変わらずスコアブックに目を落としていた。
「よろしく。」
永原の声に反射的に顔を上げると目が合った。
艶やかな黒いストレートヘアは肩より少し長く清楚な女子高生と言う言葉がよく似合う。
少し大きく髪と同じ黒い瞳。可愛いよりも美人系?いや、そんな近寄りがたい雰囲気ではない。
永原は軽く微笑み会釈すると自分の席に着いた。
「ああ…」
御幸は興味無さそうに返事するとまたスコアブックに目を落とす。
そんな御幸に永原はどこか不思議そうにカバンから荷物を取り出しHRが始まった。