第1章 ①
キャプテンという重責を担い、監督、コーチからの信頼も厚くチームメイトからも頼りにされている。
それは一見すれば今年18歳になるまだあどけなさが残っていてもおかしくない少年に課せられるには重すぎる重責。
だけど、御幸は重荷などと思ったことはない。むしろ自分が野球に向き合うモチベーションに繋がっている。
だから毎日が充実しているし、楽しい。悩むことは多いが共に汗を流す仲間と厳しくも心から信頼できる監督やコーチに囲まれ何の不満も不安もなく高校生活を送ってきた。
苦しくて、もがいて、足掻いて、野球から離れた御幸一也。周りが見ていられないような苦しむ姿。
そんな男になる瞬間があるなんてこの時、誰が知っていたのだろう。当の御幸本人でさえ。
たった一つのキラキラ輝く碧玉のような宝物。
野球以外にそんなものができることを知らなかった。
高校3年の夏までは……