第7章 ⑦
それからの二人には少し距離があった。
永原から話しかけることはなく、また御幸からも。御幸に至っては永原と目を合わそうともせずに。
だけど、相変わらず練習になればいつもの御幸。クラスの様子を伺い知ることの出来ない部員がそんな御幸の変化に気付くはずもなく。唯一、倉持だけが教室での御幸の様子を心配そうに見ていただけだった。
そんな何とも言えない空気が流れること数週間。とある話題がクラスを駆け巡った。
『守山が永原に告白した』と。色めき立つ女子だったがそれには続きがあった。
『告白したが永原には他に好きな人がいるから断った』これに色めき立ったのは男子。転校してきてから中々の男子人気のあった永原の好きな人とは一体誰なのか?もしかして自分なのか?と違う意味でも色めき立っていた。
この話に御幸が動揺しないはすがなかった。
保健室での後も永原が守山といるところは何度か見かけた。このまま守山と…などと思うこともあったのだが、そうはならかった。
だけど代わりに永原には他に好きな人がいる。それは噂程度ではなく本人から守山に伝えられた事実。想う人がいるという…
誰なのだろうか?いや、そんなこと知りたくない。知ってどうする。
邪魔をする気なんて更々ない。永原は俺と接触しなくなってからよく笑ってる。
それでいい。苦しいがこの感情に蓋をしてしまえば、存外、ラクだったりする。
野球にさえ集中していればそのうち忘れられる。そんなことより甲子園に向けて体も心も準備しなければならないのだから。