第5章 ⑤
永原も風呂に入った後なのだろうか。微かにシャンプーの香りがしてくる。それは御幸の鼻腔を心地よくくすぐる。
そして、初めて見る制服以外の姿。自分と同じようなパーカーとハーフのスウェット。すらりと伸びた足は自分とは似ても似つかない細く華奢でどこか艶かしい。思わずゴクリと喉が鳴る。
「あっ!」
その声にドキッと痛い程心臓が暴れだす。ジロジロと眺めていたのがバレたのか?と内心かなり焦った。
「御幸くんがいるの分かってたらこんな格好してこなかったのに!」
「は…?」
「だってこれ完全に部屋着だし。あーもぅ!せめてスカートに履き替えておけば良かった!」
ぷっ…と吹き出していた。初めて見る普段着。初めて見る百面相のような永原の表情。腹を抱えて笑い出してしまった。
「おま…そんなこと気にすんのか?」
「笑い事じゃないから!結構、女子には重要なことなんだよ!」
「そうなんだ。悪ぃ、悪ぃ。」
そんな会話をしながらも会計を済ませると外に出た。すると永原がふふ…とまた笑っている。
「どうした?」
「御幸くん、笑うんだね。」
「えっ?」
「だっていっつも真剣な顔してスコアブック見てるか気持ち良さそうに寝てるだけで何か話しかけても素っ気なく返されるだけだし。何だったら私嫌われてるのかな?って思ってたよ。」