第5章 ⑤
部屋を出るときに時間は確認した。消灯まではまだ少し時間がある。だけど、日が暮れてから寮の外へ出るのは誉められる行為ではない。
少し早足で近くのコンビニへ急いだ。
外は真っ暗になっているとは言えそれなりの人通り。コンビニにも会社帰りのサラリーマンや同じ年代の若者もいる。
沢村は…と思いながら手にしたのはとあるスポーツドリンク。いつも沢村はこれを飲んでいるから夕方怒鳴ってしまった詫びにと500mlではなく2Lボトルを買いに来た。
あと自分のコーヒーも買っておくか。と缶コーヒーも手に取るとレジへ。
「え……」
レジには数人並んでいてその最後尾に付くと目の前には見覚えのある後ろ姿。制服姿ではないがその後ろ姿を見間違えるはずもない。
何かを感じたのか前の女性がゆっくり振り返る。そして、しっかりと目が合った。
「え?御幸くん?」
「永原…」
本当は何か言葉を続けたかったのに喉の奥が詰まった様になって言葉が出てこない。
「どうしたの?あ、買い出し?」
「あ、うん。まぁ…そんなところ。えっと…永原は…?」
「お使い。お母さんが明日の朝食の食パンがないから買ってきてって。」
「そっか…」
手のカゴには食パンとそれ以外にもヨーグルトやら牛乳やら。クスクス笑いながら話す永原を見ているとさっきまで霧がかかった様な頭がクリアになっていく。