第4章 ④
「御幸せんぱーい!球受けてつかーさい!……キャップ?おーい!御幸かずやー!」
「え…?」
「だから球受けてつかーさい!」
名前を呼ばれた気がして振り返ればそこにはいつもの沢村。あのキラキラした目で自分を見ている。
「……ダメだ。」
「何でですか?受けてつかーさい!」
「だからダメだ。」
「だから何でですか?受けてつかー……」
「ダメだっつってんだろ!!!」
周りの誰もが驚き一瞬の静寂。だけど、気付いた時には遅かった。何も悪くない沢村に向かって声を荒らげ怒鳴っていた。
「え……」
「あっ、いや……悪い。お前は少し肩を休めないと。それに俺は今から遠征試合を見直して明日からのメニュー考えねぇと。」
「………分かりやした。春っち!一緒に走ろうぜ!」
「え?ちょ、栄純くん?」
そのまま沢村は小湊の手を引いて走り出したが残された御幸はこの上なく自己嫌悪だ。
いや、今のはない…何で沢村に声を上げたんだ?何に俺はそんなにイラついたんだ?沢村は何も悪くないのに…はぁ…後で詫び入れとくか…
思わず頭を抱えそうになりながら歩き出せば前からさっきの二人も歩いて来る。
ドクン…ドクン……また心臓が嫌な音を立てる。
その時、守山と目が合った。顔を逸らしてやり過ごそうとした御幸に永原が気付き駆け寄ってきた。
「御幸くん?」
「え…あ、永原……」
まるで今気付いたように返事したがそこには御幸を覗き込むように微笑む永永原がいる。